- 私たちには約束があった。
- いつかこの中の誰かが死んだ時、お葬式は自分たちだけでやろう。その時まで、
堅く口を閉ざしてあの森の奥での出来事は忘れて暮らそう。
- “シセツ”で育った私たちが、いつまでも“カゾク”でいるための約束。
- その時は考えていたよりもずっと早くやってきた。私たちだけでだすお葬式。私たちだけの約束。
- 深い森の奥から見ていた街は明るくてキラキラしていて、ちっとも好きじゃなかった。でもその先に見える太陽のことは好きだった。
- お葬式を終えて、“カゾク”を灰にして、私たちはバラバラに旅に出ることにした。遠くに離れていても、灰になっても、忘れてしまっても、私たちが“カゾク”なんだということを確認するための旅。
- どれほど遠くの国に逃げても、私たちが逃れることのできない“カゾク”なんだということを思い知るだけなのは、分かっていたのだけど。